横浜地方裁判所 昭和39年(ワ)1308号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事案〕調停において、被告(借地人)は、原告(土地賃貸人)の承諾がなければ、借地上に現存する建物を改築することを除いては、新築、改築又は増改築をしてはならない旨が定められた。その後、被告が既存の建物を取りこわしてその跡に新家屋を建築した行為が右調停条項に違反するかどうかが争われたものである。
〔判決理由〕思うに、建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)の解説書である「改訂増補建築基準法解説」(昭和三九年三月三〇日社団法人日本建築士連合会発行、建築法令研究会著)は、「改築」とは「建築物の全部若しくは一部を除却し又はこれらの部分が災害等によつて滅失した後、引き続いてこれと用途、規模、構造の著しく異ならないものを建てることをいう。材料の新旧は必ずしも問わない。」旨注釈している(同上書四〇頁以下)が当裁判所は、右見解を支持するものであり、さらに、前記当事者間に争いのない事実と前記認定にかかる本件当事者間における前記調停成立に至るまでの経緯、右調停成立に至る当時に表明されていた原被告双方の意向を参酌し、調停条項に盛られた当事者双方の合理的意思を探究してみると、右調停上定められた「本件土地上に現存する建物の改築」とは、既存の建物の一部変更を含むことは当然であるが、これのみに止まらず、既存の建物を取毀し用途、規模、構造の著しく異ならない建築物を建てることをも含むものであると解するのが相当であり、これによれば、既存の建物を取毀しその跡地に前説示のように既存の建物と著しく異ならない用途、規模、構造を有する本件建物を建築した被告の行為は、前記調停上に定められた「本件土地上に現存する建物の改築」にほかならないというべきであり、これと異る原告の主張は採用できない。(柳沢千昭)